昭和30年夏、玉川線に衝撃的な新型車両が登場しました。形式は200形、現在の低床車の基礎を作ったといっても過言ではない、車輪径510mmの低床用台車の採用や、卵形の独特の構造による徹底的な軽量化など、技術の粋を集めて製作された超高性能路面電車です。玉川線を走る、そのまるっこくて愛らしい姿はすぐに沿線の人気者になり、「ペコちゃん」や「いもむし」など数多くの愛称がつけられて親しまれました。昭和44年の玉川線の廃止とともに引退し、現在は宮崎台の「電車とバスの博物館」に204号車が静態保存されています。
時は流れ、平成11年夏、世田谷線となってから初となる新型車両300系が導入されました。この300系、どことなく200形に似たスタイルとなりました。思えば、200形の当時では時期尚早と判断された「低床」「軽量化」「騒音低減」などの設計理念は現在の路面電車用車両が目指す道そのものであり、設計段階から、開発者の頭の中では200形を常に意識していたからかもしれません。
そんな200形の登場から今年で50年が経った平成17年11月7日、東京急行電鉄からプレスリリースが出されました。
デビュー以来のサザエさんのラッピングを外した301編成が抜擢され、リリース発表の同日、上町検車区でラッピングの貼付け作業が行われ、日が暮れた頃、1番線の検車庫から、その姿を現しました。側面の「TKK」の表示、前面の特徴的な塗り分けがしっかりと再現され、世田谷線に「たまでん」が蘇りました。
営業運転は翌8日から行われ、初日は朝ラッシュ時のみ運転される9ウで、雲一つない青空のもとでのお披露目となりました。
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